電車に乗るとき、わざわざ切符を買う人の数も少なくなってきました。
「ピッ」と改札にICカードをかざせば、それだけで改札を通って電車に乗ることができます。
いつの間にかわたしたちの生活に当たり前のように浸透した交通系ICカード。
一体どんなものなのか、再確認してみました。
Contents
交通系ICカードとは?
電子マネーのひとつで、主に鉄道会社が発行しているカードです。
電車やバスなどの切符(乗車券)代わりとして使用でき、最近では定期券の機能がついたものもスタンダードとなってきました。
ICカードは1996~1999年にかけて、官民一体となって開発プロジェクトが行われていました。
その中で交通系ICカードの”サイバネ規格”が制定されました。
この規格は日本独自のFeliCaという技術を採用した規格で、2001年にはSuicaがこの規格により作られました。
それにより、交通系ICカードではこの規格が標準となっていきました。
FeliCaの技術では、カードをリーダーと呼ばれる読み取り端末にかざすと約0.1秒という素早さでデータのやり取りを行います。
この素早さのある機能のおかげで、改札をスムーズに「ピッ」と通過することが可能になっています。
交通系ICカードのよさ◎
ICカードを使用することによるメリットは鉄道会社側にも、利用者側にもどちらにもあります。
鉄道会社
①「ピッ」は無線式による非接触なため、改札機の可動部分を減らすことができます。そのため、メンテナンスの頻度を減らす可能性が期待できます。
②切符や磁気カードと違い、繰り返し使えるため、使い捨てによる産業廃棄物の排出量の削減にもつながっています。
利用者
①もともと電子マネーのため、加盟店や自動販売機では買い物にも使用できます。
②定期入れから券を出さずに改札を通過することができるため、時間や動作の短縮につながります。
③乗り越しも自動で計算してくれるため、いちいち乗り越し清算を行う必要がありません。
④クレジットカードとの互換性があるカードも!チャージ不足(残高不足)となる前に、自動でクレジットカードによるチャージが行われます。
⑤スマホに連動可能なカードも!連動すれば、カードを「ピッ」しなくてもスマホを「ピッ」とするだけで改札が通過できるようになります。
⑥ポイントサービスがあるカードもあり、交通機関を利用するだけでポイントが溜まるものもあります。
⑦券売機で利用履歴を確認することができます。
⑧全国で相互利用することが可能なカードもあります。これにより、旅先でも切符の値段を調べたり買ったりといった手間がなくなります。
鉄道会社にとっても、利用者にとっても、メリットの多い交通系ICカード。
特に⑧の全国での相互利用が可能となってから各段にICカードの利用は増えたように筆者は感じています。
交通系ICカード全国相互利用サービス
上記のよさでもご紹介した通り、交通系ICカードの全国相互利用が可能となりました。
2013年3月のことです。
それまでは発行元の鉄道会社の路線でしか使用することができず、何路線も使用する人は何枚も準備する必要がありました。
その結果、「結局切符の方が楽、磁気定期の方が楽」という結果を引き起こしていました。
2013年3月23日より”交通系ICカード全国相互利用サービス”が始まり、全国10種のICカードが乗車だけでなく、電子マネーとしても相互利用可能となりました。
このマークは”交通系ICカード全国相互利用”のマークであり、このマークがあるところでは10種のカードが使用できます。
その10種とは、
- kitaca(北海道)
- PASMO(東北・関東)
- Suica(東北・関東)
- manaca(東海)
- toICa(東海)
- ICOCA(関西・中国・四国)
- PiTaPa(関西・中国・四国)
- SUGOCA(九州)
- nimoca(九州)
- はやかけん(九州)
名鉄HPより
各エリア内でのご利用なら、どのカードでも乗車できます。
※各エリア外への乗り越しや、エリアをまたがっての利用はできません。
エリアに関して、よく分からない場合は各ICカードを発行している鉄道会社に確認するか、駅員さんに確認するのが◎
エリアをまたぐとあらかじめ分かっている場合は全乗車区間の切符を購入してください。(エリアをまたぐ長距離は券売機では販売されていないことも多いので窓口へ)
気づかずにエリア外に出てしまった場合は、下車駅の駅員さんに相談すればokです。運賃の精算をしてくれます
名古屋→JR東海
大阪→JR西日本
といったことですね。
ICカードは上記10種に限らず、全国にたくさんあります。
その地域・鉄道会社限定というICカードだけでなく、個別に相互利用や片利用が可能といったケースもあります。
全国相互利用サービス対象の10カードは片利用ができることが比較的多いです。
例えば…
関西の阪神阪急東宝グループ阪急バスの"hanica"は、阪急バス・阪神バスの乗車にしか使用できません。
しかし、阪急バス・阪神バスへの乗車は全国相互利用サービス対象の10カードにて可能です。
相互利用や片利用は可能となっていますが、カードの購入や払い戻し、再発行などはそのエリアでしか行えません。
全国で使用されている交通系ICカードたち
全国相互利用サービス対象の10カード
Suica(スイカ)
発行:JR東日本
利用:全国的に有名
特徴:おサイフケータイと対応して「モバイルSuica」
オートチャージ機能(ビューカードとの紐付け)
カード残額が初乗り運賃に満たない場合は入場不可
PASMO(パスモ)
発行:東京メトロ
利用: 首都圏・仙台・新潟・札幌エリア
特徴:東京メトロでの使用で東京メトロのポイント「メトポ」が加算
クレジットカード紐付け可
カード残額が初乗り運賃に満たない場合は入場不可
PiTaPa(ピタパ)
発行:スルッとKANSAI
利用: 関西・北陸・東海
特徴:ポストペイ(後払い)方式のため、チャージ不要で利用できる
クレジットカード紐づけ
ポイント連携できる会社が多い
ICOCA(イコカ)
発行: JR西日本
利用: 関西・北陸・山陰・山陽・瀬戸内など、
特徴:クレジットカード紐付け可(SMART ICOCA)
スマホやPCで利用履歴の確認ができる
カード残額が0円の場合は入場不可
manaca(マナカ)
発行:名古屋交通
利用: 愛知・名古屋周辺
特徴:利用に応じてマイレージポイント還元
地元ユーザー向けの割引システム有
残額が0円でも入場可能
kitaca(キタカ)
発行:JR北海道
利用:道央・札幌周辺
特徴:初乗り運賃に満たない場合は入場不可
nimoca(ニモカ)
発行:西日本鉄道
利用:九州・山口など
特徴:カード残額が10円未満の場合は入場不可
カード利用によりポイント取得、買い物等に使用可
toICa(トイカ)
発行:JR東海
利用:愛知、静岡など
特徴:「スマートEX」に登録すれば新幹線の利用も可
SUGOCA(スゴカ)
発行:JR 九州
利用:福岡・佐賀・熊本・大分など
特徴:カード残額が10円未満の場合は入場不可
カード利用によりポイント「JRキューポ」取得、買い物等に使用可
はやかけん
発行:福岡市交通局
利用:福岡など
特徴:カード残額が10円未満の場合は入場不可
他にも…
遠州鉄道の「NicePass」(ナイスパス)
北陸鉄道の「ICa」(アイカ)
高松琴平電気鉄道の「IruCa」(イルカ)
鹿児島市交通局の「RapiCa」(ラピカ)
伊予鉄道の「ICい〜カード」
岡山電気軌道の「Hareca」(ハレカ)
静岡鉄道の「LuLuCa」(ルルカ)
富山地方鉄道の「ecomyca」(えこまいか)
福島交通の「NORUCA」(ノルカ)
仙台市交通局の「icsca」(イクスカ)
などなど…
他にもたくさんの交通会社によるICカードが発行されています。
障害者はICカードが使えない?
とても便利な交通系ICカード。
一方でこのような記事も…
障害者が鉄道やバスなどを使う際、毎回手帳を示さなくても割引を受けられるようにできないか――。2020年の東京五輪・パラリンピックに向け、国土交通省は割引手続きの簡素化を全国の交通各社に求め始めた。ICカードを改札でかざすだけで割引運賃で乗車できる仕組みなどを目指す。
(中略)
公共交通機関の障害者割引について国の明確なルールはなく、障害の有無の確認方法や割引率は各社に任されている。現状、割引を利用するたびに障害者手帳の提示を求める公共交通が多い。ーーー2019年2月14日 朝日新聞デジタル
障害者がもつ手帳(身体障害者手帳、療育手帳)を提示すると乗車割引がある交通会社が多いです。
しかしこの割引を適用させるためには、毎回手帳の提示確認をしなければなりません。
障害者も健常者も変わらず便利さを使うことができればとてもいいですね。
関西の交通会社64社からなる「スルッとKANSAI協議会」では、障害者と介護者用のプリペイド式ICカードの発行がされています。
事前登録により、改札にタッチするだけで利用可能です。
他の交通会社からも障害者のICカード化に向け様々動き出しています。
オリンピック、パラリンピックはこうしたところにも影響があるようです。
追記
2021.3.25 朝日新聞デジタルにて「障害者はSuicaを使えない?鉄道利用の現場から」という表題で障害のある方のICカード利用の現状が綴られていました。
不便さを解消しようと、国土交通省が鉄道各社に障害者割引用ICカードの導入を検討するよう呼びかけてきた。だが、システム改修にかかる時間や費用の問題もあって進んでいない現状がある。
すべての人が快適に電車ライフを楽しむことができるようになってほしいと願っております。
おわりに
まだ切符を買うことが当たり前だった時代。
切符購入の機械の上にある路線図を必死で眺め、目的の駅までの運賃を探しました。
子どもの頃は親が切符を購入している時に一緒に眺めながら、「遠くまで行くんだ!」とワクワクしたものです。
今では子ども用ICカードもあり、切符を買うことのないまま大人になる人もありうる世の中になりました。
今でこそ、切符も自動改札ですが、もっと昔は駅員さんが手作業で切符を確認していました。
手話で「駅」という表現は、片手は開いて上に向け、もう片手の親指と人指し指で挟みます。
切符に切り込みを入れる様子をイメージしているんですね。
そのうち、この表現も「ピッ」を表す動きに代わってくるのでしょうか?
改札をひとつ切り取っても、時代の移り変わりを感じることができますね。